IoTは介護ではすでに実用段階の技術と言えます

日本の介護人材の不足は緊急の課題であり、2035年には79万人が不足すると言われています。そこで注目されているのが、IoT、センサーの活用です。どのようにIoT、センサーを活用すればよいのか、活用によってどのような効果があるのかを説明します。

介護職員の大量不足

温度管理システム,Iot 温度センサー

介護の最大の課題は介護職員の不足と考えられています。有効求人倍率の推移をみると、介護職は全職種の平均と比較して高く、全国では3倍近くになり、首都圏では4倍を超えています。そしてこれは上昇し続けています。

日本の人工構造に着目すると、約一千万人いる団塊の世代が75歳以上の後期高齢者に達するのが2025年です。これは2025年問題と呼ばれています。75歳から79歳で要支援・要介護になる人は14%程度ですので、本当に要介護の人が増えるのはさらに10年後の2035年と予想されています。この頃には75歳以上が2200万人以上に増え80歳以上が特に増えます。しかし介護を含めて働くことができる年代の人口はどんどん減っていきます。
厚生労働省の推計では介護職員は2025年に37万7000人不足し、経済産業省の推計では2035年に約79万人が不足するとされています。

現在、介護職員は180万人います。そして2025年に必要な介護職員は253万人です。2025年までに70万人増やさなければなりません。2035年にはあと120万人以上の人手が必要です。

外国人労働者による介護は期待薄

これを外国人労働者で補おうという話もあります。外国人技能実習制度が2017年から介護分野でも解禁になりました。日本で技能講習を受けた外国人が日本の企業で技能実習として働くことが可能な制度です。
しかし、高齢化が進み介護人材が不足しているのは日本だけではなく、アジアの国は中国も含めて軒並み高齢化が進んでいます。このような中、彼らにとって日本はどれだけの魅力があるでしょうか。日本で資格を取るには日本語を習得しなければならずハードルが高いです。例えば、フィリピン人は英語を話せる人が多いので、英語の通じる国で仕事をするほうがハードルが低いです。そして介護の資格を取って本国に戻っても母国にはまだ介護の仕事がありません。長寿による介護ニーズが日本と同じように表に出てくるまでにはまだ20年はかかるでしょう。そうであれば日本語を勉強して日本で介護の技能を身につけるメリットがありません。

介護分野におけるテクノロジーの活用

温度管理システム,Iot 温度センサー

このような現状から、テクノロジーを活用して介護職員一人あたりの生産性を高めるという方向が期待されています。
例えば、政府は補助金で介護ロボット開発・導入の支援を進めています。介護ロボットは移乗介助など力仕事をサポートするものが主流でした。しかし、実際の介護現場では移乗だけが仕事ではなく、装着型のものはずっと装着していると他の作業の邪魔になるなど、実際はあまり役立っていませんでした。
そこで国も2017年に介護ロボットの重点開発分野を拡大しました。力仕事だけでなく、センサー・IoTやAI活用を意識した内容が追加されています。

  • 高齢者等の外出をサポートし、転倒予防や歩行等を補助するロボット技術を用いた装着型の移動支援機器
  • ロボット技術を用いて排泄を予測し、的確なタイミングでトイレへ誘導する機器
  • ロボット技術を用いてトイレ内での下衣の着脱等の排泄の一連の動作を支援する機器
  • 高齢者等とのコミュニケーションにロボット技術を用いた生活支援機器
  • ロボット技術を用いて、見守り、移動支援、排泄支援をはじめとする介護業務に伴う情報を収集・蓄積し、それを基に、高齢者等の必要な支援に活用することを可能にする機器

見守り業務を効率化

介護現場における夜勤は少人数体制で運営されていることが多く、職員数の不足と介護職員の負担増加の原因となっていました。
介護者の部屋に接続されたセンサーから今部屋にいるかどうかを検知したり、カメラ動画で写った自分物を顔認証することにより、だれがベッドから離れているかをリアルタイムで把握できるようになりました。これはコール数の軽減や、徘徊やトイレ介助などの職員の作業軽減に貢献します。

要介護者の排泄を支援

これまで排泄介助は介護する側とされる側の双方にとって負担の大きなものであるという課題がありました。実際に失禁した場合は衣類や寝具の清掃にくわえて感染症予防のための衛生面に配慮した作業も負担を増やします。また、従来の排泄介助はベテランスタッフの経験と勘に依存する部分が大きく、経験の浅いスタッフと比較して介護の質に差が出てしまいました。

腹部に装着する仕様の排泄予測機器

排泄予測機器は人体に悪影響を及ぼさない超音波で装着者の排泄を司る臓器の動きを捉え、排泄のタイミングを予測します。
予測された排泄タイミングに応じてスタッフが対応すれば、要介護者が排泄に失敗するリスクを抑制できますし、介護の質がスタッフごとの経験と勘に依存する部分も少なくなります。

トイレの空き状況や緊急呼び出しを管理

トイレの空き状況を、ドアの開け締めセンサーや人感センサーを使い管理します。今までのトイレを作り変えることなく様々なトイレ環境と管理条件を設定でき、呼び出しボタンセンサーを使って緊急コールもできます。これらから得られる警報をリアルタイムで一括で見られるようにしたもので、低予算でトイレに関わるコストとリスクを下げます。

IoTによって要介護者の居室の温度を管理

年齢を重ねると気温の変化に体がついていけなくなります。体温調整や温度変化への適応能力が衰えるため、熱中症や気温差によるヒートショックを起こしやすくなります。とくに呼吸器に疾患があったりベッドで寝ている時間が長いと、乾燥によって鼻や喉の粘膜を痛めたり、タンが出せないことで呼吸困難や肺炎を引き起こす可能性があります。
また、エアコンの誤操作により気温が上がりすぎたり下がりすぎたりすることもあり、それがヒートショックの原因となることもあります。
そのため介護職員の見守りにおいては室温が適切であるかどうかをチェックしなければいけないのですが、これが負担の増加になってしまいます。温度の適切さというものは共通している部分もあり、かつ個人的な部分もあります。寒すぎる/暑すぎるというのはエアコンの誤操作の原因となります。
これらの問題を解決するため、センサーで温度・湿度・照度を検出し集中して表示することで見回りに関する労力を低減するとともに、部屋が暑すぎるや寒すぎるといったことへの警報を出すことで要介護者のリスクを減らすことができます。

今後求められる「現実的な」介護IoT

温度管理システム,Iot 温度センサー

国が2017年に発表した介護ロボットの重点開発分野が、パワードスーツと言ったSFめいたものから排泄支援に大きく重点が変わったことは、視点が未来から現実に変わったことの象徴的な出来事であると思います。介護におけるIoTの活用は未来のあるべき姿の提示というよりも、すでに現実的なソリューションとなったのだと言えます。

ですので、実際の介護施設におけるIoTの活用の検討も、パワードスーツのようなものから、現実的なアプローチを取るべきだと言えます。具体的には今ある設備や施設の活用です。いくらスマートトイレが素晴らしくても今すぐ施設のすべてのトイレを作り変えるというのは現実的ではありません。通信手段にしても、すでに施設内にあるWiFiを使うなど、低コストで設置や使い方の習得に時間のかからない方法を考えるべきだと言えます。